文学者と温泉
2012年03月05日
最近、妻から子供の国語力がいまいちだと言われて、それなら本を読めばいいじゃんと妻と話していて、子供に本を読みなさいといっても世の中、本よりも楽しいことがたくさんありますので中々、本を手に取るまで時間がかかるので、簡単な本を選ばせて「読み聞かせ」をしています。先日も読み聞かせした後にこの登場人物は何を思っているの?とかなんで泣いているの?笑っているの?とか、なんでだろうと問いかけてみました。最初は問いかけに対してとんちんかんな受け答えをしていましたが、だんだん的を絞った答えが出来るようになってくるんですよね。それも直ぐに。子供の上達や可能性は凄いものがあるなーと少しバカ親っぽいですが、子供に本を読みなさいと言っている手前、良いだしっぺが本を読まないのは、恰好がつかないので、僕も仕事に関連のある書物を今、貪るように読んでいます。(笑)その中で日本温泉文化研究会さんの「温泉を読む」を呼んだ中に有名な文学者の作品の中には温泉が登場する記述が何点かありましたのでご紹介してみたいと思います。
有名な「伊豆の踊子」の作者、川端康成(1899~1872)は有名な温泉文学者だったらしいです。隋筆『伊豆の湯ヶ島』(1934)の中の一編で述懐しています。
【私は温泉にひたるのが何よりの楽しみだ。一生温泉場から温泉場へ渡り歩いて暮らしたいと思っている。それはまたからだの強くない私に長命を保たせることになるかも知れないし。」(湯ヶ島温泉)
夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する温泉は有名な道後温泉。明治27年(1894)に竣工した豪華な木造三層桜近代和風建築であり、温泉建築としては平成6年に国の重要文化財にしていされている道後温泉本館の1階の神の湯が「坊ちゃん」に登場するモデルとされています。
【温泉は3階の新築で上等は浴衣をかして、流しをつけて八銭で済む。(中略)運動の為に、湯の中で泳ぐのは中々愉快だ。おれは人の居ないのを見済ましては十五畳の湯壷を泳ぎ巡って喜んでいた。ところがある日三階から威勢よく下りて今日も泳げるかなとざくろ口を覗いてみると、大きな札へ黒々と湯の中で泳ぐべからずとかいて貼りつけてある。】(坊ちゃん)
坊ちゃん最近読んだばかりで確かにこの行ありました。(笑)赤手拭と生徒からからかわれたり新任教師の奮闘ぶりが面白いですよね。いつかご紹介できたらと思っていたので良かったです。いまだに道後温泉では「坊ちゃん泳ぐべからず」と看板があるそうです。粋ですね。(笑)また、同時期、漱石と一緒に活動していた正岡子規は、脊椎カリエスで下半身が萎える病気で寝込んでいた時に詠んだ句が、子規記念博物館の前に刻まれてあります。
【足なへの病いゆとふ伊予の湯に飛びても行かな鷺にあらませば】
温泉に入りたいと思う、情熱と温泉を愛する気持ちと言うのは今も昔も変わらなくて、いつまでも日本人の心の故郷になっているんですね。日本各地の素晴らしい歴史と伝統文化と温泉が日本人の文学の形成の一端となり、日本人の四季を温泉を愛する情緒豊かな日本人の良さを作り出した基になっていったことも一分はあるように思いました。大地の恵みである温泉を清水湯でも享受させていただいていますので、大切に使いながら皆様に心から喜んでいただける温泉銭湯を築いてまいります。
参考文献、温泉を読む日本温泉文化研究会(お湯だけじゃない文化が湧き出ている!) http://www.geocities.jp/onbunken_1126official/
武蔵小山温泉・清水湯三代目談。
カテゴリ:知識