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銭湯の人間模様(武蔵小山温泉人生ブログ)


今はなき番台・・・。現在ではフロントになっています。そんなお客様との最前線。風呂屋なりの出来うる限りの接客を心がけています。お客様商売とひとことで言いますが、本当に番台(フロント)という舞台にいると沢山の人生模様を覗うことができるんです。いつもくる常連さんでも今日は機嫌が悪いなとか今日は疲れ気味だなとか、今日はなにかいいことがあったのかなとか、人と接する基本的な仕事が実はいい刺激となってるのです。「いい湯だったよ」「いい温泉だね」とか言って帰っていく姿はかすかに湯気を帯びていて清潔感と颯爽とした後ろ姿に希望の光明が射しているように見えることがあります。そして番台から聞こえてくるお客様の話し声は時おり心温まる会話もあるんです。

ぽつんと誰かを待っている老年の婦人。温かそうな半纏(はんてん)を着てどこか楽しそうにしている。時間を約束していたのでしょう。上気だった血色のいい顔のご主人が「まった?」といって隣にちょこんと座った。首をふる婦人。「おとうさん、ラムネのむ?」嬉しそうに頷きながら「のみたいね」と答えるご主人は、フロントにいた僕に声をかけてきた。「太郎くん、ラムネちょうだい」おもむろに足元にある冷蔵庫から一本のラムネを手にとった。ビー玉の栓を専用の栓抜きで力一杯押すとシュワってビンの中の気圧が抜けて発泡しながら注ぎ口から溢れてきた。「おじさんおばさん。はい、どうぞ」といって手渡した。近所の常連さん。毎日やってくる。いつも決まったように風呂上り夫婦で一本のラムネを仲よく分け合う。こんな仲の良い老夫婦になりたい。そう思った。

武蔵小山温泉 湯旦那(いまペンネームを検討中)